第2章 アスエルさん

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 良く晴れた朝。僕はお店の二階にある自室のベッドで目を覚ます。  カーテンをあける。窓の外には、いつもなんとなく薄暗い魔物の森が広がっている。  んっ? 今何かが、素早く森から飛び出してきたような…。  顔を窓ガラスにつけて下を見ようとする。  ダメだ、畑の端っこしか見えない。うーん、ま、いっか。  魔物の森っていっても、凶暴な魔物もいないし、獣もいないし、実は安全なんだよね。人間のほうが実は凶暴だし、危ないし、怖いし。脳裏には、昨日の大男A&Bがよぎっていた。  ベッドに戻って、パジャマを脱ぐ。クローゼットを開けて、いつもの白いシャツ、鹿革のズボン、木綿のカーディガンを羽織る。寝室の外に置いてあるブーツを履く。  台所へ移動。火をおこして、お湯を沸かす。  魔物の森で採取した、ヘンデルの葉を乾燥させたお茶をいれる。このお茶は体にとってもいい。父さんがよく淹れてくれた。ヘンデルの葉は、万能薬でもあり。魔物の傷薬にも、人間の傷薬にもなる。  僕の朝食は、野菜や卵。時々は、パンも食べるけれど、昨日の朝に食べたのが最後のパン。買いに行く予定もちょっとない。お金は節約しないといけないから。  魔物の森には、案外、食べられる果実や葉物野菜がけっこうあるし、僕は庭で家庭菜園もやっているから、がんばれば食費はかなり切り詰められる。    たしか、庭の菜園でトマトが食べごろだったから、朝は、目玉焼きとトマトサラダにしよう。  剪定ばさみを手に、一階に降りる。裏口から庭に出る。  と、畑の手前に、見覚えのない真っ赤なスライムがいた。
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