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人間に知恵と感情と力を与えたことは、確かに神々に恩恵をもたらすことにも繋がった。
しかし、知恵を与えることにより“欲”が生まれ、人間は自らの利益を求めるようになった。
力を得て、その力を振るい、力によって世界を抑えつけようとする者もいた。
感情によってそれらが抑えられる事もあったが、感情によって傷つく者もそう少なくはなかった。
人間は人間をーーそして、地上に生きる全ての命さえ、傷つけ自らを破滅への道に追い込んでいった。
しかし、それらは神々にとってあまり影響を与えるものとはならなかった。
何よりも神々が恐れたもの…それは、人間は自らの必要でない記憶や知恵を“忘れる”ということだった。
これは人間の信仰によって生まれた新たな神々に大きな傷を与えることとなる。
信仰によって生まれた神は、信仰がなければ生き続けることが出来なかった。
つまり、人間に“忘れられる”と言うことは、それは“死”を意味していたのだ。
地上の神だけではない。天界にも人間の信仰によって生まれた神々は多かった。
人間に忘れられた神々は、“消滅”してしまう神も多かったが、人間に忘れられたことに怒り、人間に危害を加えようとする神もいた。
そうなってしまった神は正気を失い、制御が出来なくなってしまった神々から発せられた負のエネルギーが、人間達を病や戦争などに招いた。
そうなった神を“闇堕ち”と呼び、天界に住まう神々は頭を悩ませていた。
ゼウス神は、これ以上の事態悪化を恐れて、1人の神を地上へ送り、世直しの旅をさせることにしたのだ。
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