8人が本棚に入れています
本棚に追加
「ゴホッ!ゲホッ!」
オヤジのような咳が聞こえた方には、いつの時代かも分からないような布1枚で巻かれただけのような服に、ブランドのストレートな髪を持ち、体に沢山の装飾品を身につけた神々しいオーラを放つ同じぐらいの歳の女性が座り込んでいた。
なんで空から降ってきた…?ていうか、空から降ってきてなんで生きてるの…?そんなことは今は彼にとって問題ではなかった。
問題なのは、目の前にいる彼女が物凄い宝石類を身につけているということだ。その値段は全額で億も簡単についてしまうほどだろう。
彼は必死に頭を回転させた。どうやって奪う?脅す?強奪する?相手は女だ。そんなことは簡単にできる。でも、それはスマートじゃない。どうせやるなら、騙して安心させてから奪うのが1番だ。彼は、あれだけの音を響かせながらも何事もなかったかのように立った女性に話しかけた。
「あの…大丈夫ですか?」
こういう時は第一印象が大事だ。紳士に話しかけて相手の不安や警戒心を解くのだ。
「おケガとか…してませんか?」
「ご心配なくかすり傷ですから」
彼女はそう言うって服についた汚れを手で落とした。
あんだけすごい音響かせてたのに、かすり傷だけってどんな体してんだよ。思わずそんなツッコミが脳内で再生させる。
すると、彼女がそんなことよりも…。と話しかけてきた。
「私を騙そうとしてるならやめた方がいいわよ?君の心の声、丸聞こえだし。安心させて金品を強奪しようとか、そんなことはするもんじゃないわ。君のためにならないしね」
は…?な、なんでバレてんの。そんな素振りを見せたつもりないのに…エスパー?魔法使いか何か?
「残念ながら、私はエスパーでも魔法使いでもないわよ」
彼女の言う通り、彼の心の声は完全に丸聞こえのようだった。こんなことは初体験でどうしたらいいか分からなくなっていた彼に、彼女は1つ息を吐いて、装飾品を外すと、彼に放り投げた。
「そんなにこれが欲しいなら全部あげる。別に、こう言うのに興味ないしね」
「へ?」
いきなり渡されて、完全に彼は棒立ちになった。 何が起こったのか、いまひとつ理解が出来なかったからだ。
最初のコメントを投稿しよう!