言えなかった想い

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「まだ激しい運動は出来ないけど、すごく良くなったと思う。神奈川にいた頃は夜発作を起こすことが多かったけど、こっちに来てからはほとんどないの」 「良かった……」 「巧斗にも会えたし、来那と壮にも会えた」  その時、一発目の花火がひゅるひゅると音を立てて夜空へ昇った。 「私ね、中学卒業したらまた神奈川に戻るの」  パン! 大輪の光の華が弾けた。 「だから、皆とこうして居られるのもあと少しだから……夏休みに出来るだけ一緒にいたかった」  弾けた花火がパラパラと寂しげに(ほど)けて落ちていく。  巧斗が美優と別の高校へ行くと言っていた理由が今わかった。  美優はあと半年もしないうちにいなくなるのだ。 「マジか……お前知ってたん?」  壮が巧斗へ問い掛けた。  私も巧斗の答えを黙って見守った。  次々に打ち上がる花火に歓声が上がる中、巧斗の声だけが沈んだ。 「……うん」  もうすぐ夏が終わる。  巧斗と美優の関係はそれからも変わることは無かった。少しの間離れてしまうけれど、高校を卒業したら巧斗は美優の住む神奈川へ行くのだと漠然と思っていた。  だから中学を卒業して美優が私達の前から消えても、自分の想いを巧斗へ伝えることは無かった。
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