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ずっと待ってるから
「来那、帰るぞ」
「うん」
私達は今、同じ公立高校に通っている。
受験会場に巧斗の姿を見つけた時、本当に驚いた。
1時間に2本しか走らない電車に乗り、地元駅で降りる。そこに止めている自転車を取ると、2人で押しながら歩いた。
「もうすぐ文化祭やな」
カラカラという自転車のタイヤの音がのどかな田園風景に響く。
もうすぐ季節は秋で、空を沈みかけた太陽が
朱色に染め上げ、遠くの山肌を照らしている。
「せやな。もう作品出来たん?」
私達は写真部に所属している。
巧斗は歩みを止め、制服のポケットからスマホを取り出すと夕焼けの空を写真に収めた。
「部長に提出はした。来那は?」
再び歩き始めると、カラカラと音が鳴る。
「したよ」
カラカラカラ……美優と壮が一緒にいた頃はなかった沈黙が流れる。
本当はもっと色んなことを話したいのに、話せば美優の話をしてしまいそうで、自然と口数が減ってしまう。
2人は今も遠距離恋愛をしているのだろうか。
たまに美優からlineで連絡は来ていたが、巧斗との話題を私が避けていたのもあって分からず仕舞いだ。
「じゃあ」
「また明日」
いつものように分かれ道で別れると自転車に跨った。
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