言えなかった想い

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言えなかった想い

 私は生まれてから高校卒業まで、その風景の中で育った。  一番近いコンビニに行くにも車で30分は走らないと行けないような所で、学生時代は早くこんな所から抜け出したくて堪らなかった。  だから、大学は都内の学校を選んだ。  田舎暮らしの私には東京で見るもの全てが新しく、刺激的だった。  コンビニなんて少し歩いていれば何件もある。  ずっと黒髪だった髪の色は少し明るく染まり、化粧もするようになった。  ここには私を変えるものが、なんでも揃っていた。  けれど――あなたはいない。  東京に来て私が変わらなかったこと、それはあなたを好きなこと。  小さい頃からずっと一緒にいたから、いつから好きだったのか分からない。  自分の気持ちに気づいたのは中学3年生の頃。  周りも異性を意識する頃で、誰が誰を好きとかそんな会話が急激に増えた。  それでも私はこの気持ちが恋なのかはっきりとは分からずにいた。  ある日、友達の美優(みゆう)にあいつが好きなんだ、と告白された。  美優の視線の先には、あなたが――巧斗(たくと)がいた。  その瞬間、私は自分の気持ちに気づいた。  私は巧斗の事が異性として好きだということに。     
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