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素っ気なく答えると、巧斗はそれ以上は何も聞いてこなかった。
川原につくと、照りつける太陽は肌をジリジリと焦がすのに、頬を撫でる風はひんやりとしていた。
太陽の光が川面にあたり乱反射している。
「来那ちゃん、うちの小僧がごめんな? まったく振られたからって無視はないやろ、無視はよ!」
太一さんがテントを組み立てながら言ってきた。
「ううん。私も……ごめんなさい」
「来那ちゃんが謝ることないんやで。ほれ、壮」
壮が太一さんに背中を思い切り押されて私の前に躍り出た。
「……ご、ごめん。これからも友達として仲良くしてくれよ」
あと4年。
高校を卒業したら大体の人が都会へ出ていく。
それまでの間、狭い世界で暮らす私達はこうして顔を突き合わす事になる。
「……うん」
だから私は高校を卒業したら東京へ行く。そうすれば、もうこんな惨めな思いはしなくて済むからだ。
「よし! これで仲直りだね! 夏休み終わったら学校おいでよ?」
美優が笑顔で私の肩を叩いた。
そうか。今日から丁度夏休みに入ったんだった。
暫くの間、家に引き篭もっていたから日にちの感覚が分からなくなっていた。
久しぶりの陽射しに若干気分の悪くなった私は川から上がってテントの中で休んでいた。
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