言えなかった想い

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「私より美優の方が似合ってるよ。それにこれお母さんのお下がりだし」  美優は椿の柄の浴衣を着ていた。  背の高い美優には浴衣がよく似合っていて、背の低い私は引き立て役のようだった。  美優はまだ私に元気がないと思っているのだろうか。だから遊びに連れ出してくれているのだろうけれど、正直この2人の姿を見るのはしんどい。 「射的だ!」  壮が子どものように目を輝かせて射的の屋台へ駆け出した。  私達も後を着いていく。 「お、お兄ちゃんやるか? お勧めはこのゲームソフトやで?」 「それ、絶対倒れへんようになっとるやろ」 「さっき1人持っていったで?」  そう言って屋台のおじさんが指差した方向にゲームソフトをぶら下げた男性がいた。 「……やる! 巧斗もやるやろ?」  壮に話を振られた巧斗は「え?」と一瞬躊躇したが美優に「やってみなよ!」と言われると渋々小銭をおじさんへ渡した。  結局、壮はお目当てのものを落とせず、残念賞の水鉄砲を貰って文句をブツブツと言っていた。 「あはは! 壮、残念だったね」  カラコロと鳴る下駄のように笑う美優に壮は「巧斗だってそんなもん取ってどないすんねん」と絡んだ。 「どないしよ……」     
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