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いきなり山本さんの名前が出て、飛び起きた。
僕だって、今の今まで忘れてたよ。
山本 梓さん。僕が大学生の時好きになった人だ。
同じ天文部サークルで、星空観測の時初めて話して…。見た目も可愛かったけど、声が鈴のように柔らかで…
僕は当時を振り返り、思わず目を閉じた。
するとどうだろう、暗くなった僕の前に白いマリモがふわふわと浮かんでいるんだ。
「あれ? まだ夢の途中だったか?」
目を開けそうになると、マリモはクルクル回り出した。
「待て、待て! だから、目を開けるなって! いいか、よく聞け。目を開けずに聞け。
お前は、あと5年で死ぬ。今なら、死に方のリクエストを受け付けるから、早く言え。
そうじゃないと、こっちで勝手に決めるぞ!」
死に方のリクエスト?
病気で、とか、そういうやつ?
『リクエスト受け付け』なんて言われて、僕は迷わず口にした。
「誰かの迷惑にならなきゃ、どんな死に方でもいいんだけどさぁ。
だけど、痛いのと、苦しいのは嫌だな。最期は、眠るように死にたい」
「わかった。それじゃ、あと5年だ。せいぜい彼女に告白しろよ」
マリモの言葉が優しい。それでいて、すごく真剣。
本当に本当に僕はあと5年で死ぬみたいじゃないか。
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