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「訊きたいんだけど」
「なんだ?」
「僕は今36才だ。5年後っていったらまだ41才だよ? 死ぬには早いと思わない?
納得できるような理由を教えて欲しいなぁ」
マリモは、ふわふわ浮きながら「うむ。良いだろう。教えてやろう」と張り切った声をあげた。
「お前が一番最初に、自分の寿命と引き換えに願い事をしたのは、5才の時。『一生のお願いです、シチューにニンジンが入っていませんように』だ」
「僕、そんな事言った? 覚えてないなぁ。 っていうか、なにそれ? それ寿命と引き換えなの?」
確かに、子供の頃の僕は好き嫌いが多かった。
特に、シチューに入っているニンジンが大嫌いだった。嫌いな野菜は汁物に入れれば何とかなる、という母親の親心は、未だに理解できない。
ついこの間も、ブロッコリーがカレーに入ってて、『もう、一生のお願いだから、ブロッコリーは入れないで』って……
「わぁー! そんなのカウントされたら、あっという間に寿命なんて無くなるじゃん!」
前もって教えていてくれたら、僕だって…たぶん、そんなに『一生のお願い』を使わない…よ?
「このシチューのお願いで、お前は35日の寿命を使った」
マリモは何かを読み上げているみたいに、淡々と告げる。
「それから次は…」
「ちょっと、待ってよ! 35日? そんだけ? そんなのに、僕はもう残り5年まで使い果たした、っていうの?」
マリモは言葉を止めて、僕を上目遣いで見やる、ように僕の目の前で静止した。
「そうだ。お前はほとんど毎日なんだかんだで『一生のお願い』をしただろう?
ほら、よく言うだろう。コツコツ貯金で家が建つ、ってな」
それから、上手いこと言った、とでも言いたそうに、ゆっくりクルクル回り出す。
それを目で追っていたら、目が回って来た。
一生のお願いだから、夢だと言ってくれないかなぁ。
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