Chapter3

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―――行っておいで。私の可愛い可愛い飼犬たちよ 「さて、じゃぁ今回も仲良しこよしで行きますか」  アザミの部屋の扉を閉めながらゼンが溜息をつきながら言う。それにそれぞれが返事をし、多少気だるげなように歩を進め始めた。  目指す場所は邸の一番上にある扉。そこから上層階のホワイトの世界、イヴの楽園に行けるのだ。  四人は特に何も話すことはせず、辿り着いたイヴの楽園へ続く扉を開ける。ギィと少々古い音を立てながら扉は開き、湿ったカビ臭いを帯びた風が四人を包み込んだ。  扉の先に待つのは螺旋階段。灯りは壁にある剥き出しの電球だけだが、その頼りない灯りでもブラックである四人には全く問題はない。そのまま慣れた様子で足を踏み出し階段を昇って行く途中、一番前を歩いていたゼンが口を開いた。 「なんか、変じゃない?」 「何が?」  皆が首を傾げる。 「アザミの意地悪はいつものことだけど、あんな風な命令は今まで無かった」 「あんな風って、10分で片付けて来いってやつか?」 「うん」  カツン、カツンと足音を響かせながら昇る四人。誰も足を止めることはしない。 「たしかに今まで色々な意地悪はあったが、早く片付けろっていうのはねぇな」 「だから、お仕置きじゃ、ない?」 「いや、でもそれ以外に何かある気がする」  先頭を歩いているため誰にも見えないが、ゼンはその赤い瞳を細めた。  この中でアザミとの付き合いが一番長いのはゼンだ。そのゼンが何かあると言うのだ、もしかしたら本当に何かあるのかもしれない。だが、それを今から確かめる術はない。  セツナは考えるように深く息を吸い吐き出すが「今は時間通り終わらせることしかない」と言うことしか出来ず、それにカゲミナが「そうだな、さっさと終わらせようぜ」と同意する。そしてリオも頷き、ゼンも「まっ、そうだね」と肩を揺らした。  そうしているうちに螺旋階段を昇り終え、また扉が一つ。また古い音を立てて開けば、そこはイヴの楽園の地下水路である。今日はこの間とは違い地上での依頼ではなく、ここ地下水路での依頼である。  場所はドットD2の下。ここから少し歩いた先にある。そこまでの距離じゃない。 「それじゃぁ行きます、かっ」  語尾と同時に走り出す四人。先ほどの階段の時とは違い、足音は全く聞こえない。まるで風のように走って行く。 (―――今日も殺すのか)
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