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【変わらぬ仲】
「.....い、おいっ、起きろってば!」
『はっ、わあ!ごめんなさい!』
耳元でいきなり大きな声を出され条件反射で飛び起きると、一人の男子生徒が立っていた。
『て、あ....れ、カイ?何してんの?ここ、B組だよ。』
確かいまは6限目の授業の最中のはず______。
クラスの違うカイがここにいるのはおかしい、訳がわからず目の前の彼を見上げているとため息をつかれた。
「はぁ.....周り見てみろよ。」
そう言われて周りを見渡すと、さっきまでたくさんいたはずのクラスメイトが一人もいなくなっていた。
「寝ぼけてんな、6限なんてとっくに終わってんだよ。ほら俺たちも帰るぞ。」
『えぇ.....まじ?ちょっと待って、いま準備するから。』
まだ眠ってる頭を起こして机の中にある教科書を急いで鞄に詰めていく。
どうやら6限のHRは完全に睡眠学習に費やしてしまったようだ。先生も皆も起こしてくれないんだから、なんて薄情なんだ。
「お前、最近寝てないだろ?」
『えっ?まぁ.....そんなに寝てないけど。』
カイは自分の目の下に人差し指を指し、見てみろと合図してきた。
「クマ。凄いぞ、パンダみたいになってる。」
『パンダ?』
鞄の内ポケットに入れていた鏡を取り出して確認すると確かに黒かった。
でもこんなのよく見ないと隈の濃さなんて分からないのに。
『よくわかったね、人の隈の濃さなんて普通気づけないよ。』
鏡をしまい、帰る準備の終わった鞄を担ぎ、側に寄るとグリグリと頭を撫でられた。
お陰で髪がグシャグシャになってしまった。
『ちょっと!髪が崩れた!!』
「おっ、悪い、悪い。まぁ、俺はお前のことなら分かるんだよ。なんでもな。」
そう言ってカイは自分がボサボサした私の髪を手で整えながら笑った。
なんでも、なんてちょっと怖い。
『....軽くホラーだね、その発言。』
「はっ?」
『あっ、ウソウソ。さっ、帰ろっ。』
ちょっとムッとしたカイの腕を引きながら教室を出る。
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