10人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
【大切な人】
『おじゃましまーす.....』
右開きの大きな扉を開けながらいつもの挨拶をする。
挨拶をしたところで、この家の人は共働きだから誰もいないから、返事が帰ってくることはない。
私は入ってすぐのところにあるスイッチを押し、廊下の電気をつけた。
「いい加減“それ”止めろって何回言えば分かるんだよ。」
後ろから入ってきたカイが不満そうな声で言った。
“それ”とは挨拶のことだ。
『だって、ここアンタの家じゃん。他所の家に上がるときはこれ言わなきゃ気がすまないんだもん。』
毎日来ているとはいえ、勝手にズカズカ上がるなんて不躾なこと私にはできない。
でもカイは他人行儀なところが気に入らないらしく、いつも注意してくる。
「他人が廊下のスイッチなんて知ってるわけねーだろ。」
『そ、それは前に教えてもらってるから知ってるだけで!』
「あぁ、そうかよ。」
いつもだけど、自分の言葉に従わない私にイラつきなから奥へと行ってしまったカイ。
私も靴を脱いで、後を追った。
最初のコメントを投稿しよう!