ただ好きなだけだったんだ

【昔のこと】

「あなた達は絶対に結婚なんてできないの
よ」

この言葉が今でも頭の中から離れない。

あれはいつの頃だっただろう。

私には家が隣同士で生まれた頃から一緒の幼なじみの彼がいる。私は彼が好きだったし、そして彼も私を好きだった。

あの頃、二人でいつも話していたことがある。

「ケッコンしたらずっと一緒にいられるんだって、お母さんが言ってたんだ.....ちーちゃん、僕といつかケッコンしてくれる？」

『うんっ、いいよ!』

幼かった私たちは意味もよく分からなかった“結婚”の約束をただずっと一緒にいられるから、という理由で交わしていた。

ある日、彼の家で私の母と父も交えて夕飯を食べることになった。

全員が集まるまたとないこの機会に私たちはその事を自分たちの親に話すことにした。

「僕たち、将来ケッコンすることにしたんだ!」

深呼吸をして二人で手を繋いで、きっと皆祝ってくれる、笑ってくれる、そう思って言った。