暇と退屈

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暇と退屈

 目的地まで一日ある。景色は美しいが、ただただそれを眺めていてもそのうち飽きるだろう。本も読み終えてしまったし、さて次は何をしようかと考えてみるが、なにも浮かばない。  そもそも、あまりにも静かすぎるのだ。  たまにはのんびり行くのもいいのではと言われ、旅の足にフェリーを選んだ。  最初は小波の音や心地よい潮風に船旅を選んで正解だったと思ったが、日が沈むにつれ、いつものように列車を使えばとっくに目的地に着いているのだなと考え始め、今ではどちらかといえば後悔の方が勝っている。  フェリーは妙に静かで、どこへ行っても咳をすることすら憚られる雰囲気がある。  気にしすぎなのかもしれないが、どうにもそれが落ち着かない。  静寂の中で小波と潮風の音だけが聞こえる。  静かでいいと思う人もいるのかもしれないが、あまりにも静かすぎる。  寝てしまおうとしたがどうにも寝付けない。目を閉じると、静かだと思っていた小波や潮風の音が耳につく。こんなことならもう一冊くらい本を持ってくればよかった。  そんな私の気分と同調するように、日はどんどん沈んでいく。夕暮れの橙色はその強さを増し、私の顔に影を作る。  落ち着かない。     
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