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『ごめん、忘れてた。どうする? あと70回くらいこれを続ける。帰ってもいいよ』
「こんなこと、100回もやるのか!?」
『百射っていうんだ。そうやって自分の型を固定させていくんだよ』
「毎日やってんのか?」
カイは頷いた。
「雨の日も? 寒い時はどうするんだ? ここは3方壁がないじゃないか。冬はどうしてるんだ?」
喋るのが早過ぎたのか、単語が多すぎたのか、カイが戸惑ったような顔をした。俺はメモを取り上げて同じ質問を書いた。
『変わらないよ、そういうのは関係無いんだ』
カイはそれきり弓を番えて自分の世界に入ってしまった。気がつけば夜になっていた。
あれから何度か『道場』に行った。カイの佇まいに惹かれた。
カイは『百射』が終わると必ず道場の隅々まで掃除をする。床なんか、もういいだろ!と怒鳴りたくなるくらい磨いていた。
いつの間にか俺も一緒に床を磨くようになっていた。カイと話すことなんか何も無かったが。
「あのハーフヤるっての、どうなった?」
テリーがぼんやりしてる俺に聞いてきた。
「あ? あれ、やめた」
「なんで」
「お前たちの言う通りだった。面白くもなんとも無いやつだった」
「へぇ……。なんか変だな、キース」
テリーは俺の後釜を狙っている。最近は露骨に俺を蹴落とそうとしているのが分かるが俺に言わせればコイツの頭がおかしい。 俺はグループのリーダーなんて誰だっていいし、そんなことに興味はないんだから。やりたきゃやればいいんだ、俺に構わずに。
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