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「今度は誰にする?」
「一通りヤリ尽くしたんじゃないか?」
「でも全部ってわけじゃない」
この物色してる時が一番楽しい。標的を決めた途端に詰まらなくなる。どいつもこいつも、たいして変わらない。
――やめてくれ! さわるな! もう……
聞き飽きた。顔が喘ぎながら変わっていくのを見てるのは笑えるくらい楽しいけどな。
その時階段を上っていくのっぽを見かけた。長い棒を持っている。そいつを見かけたことがなかった。
「あれは?」
「やめとけ、綺麗な顔してるけどあいつはなんかキモいよ。何考えてるか分かんねぇし」
ダンのしかめっ面がいつもよりひどくなる。
「日本人とのハーフだってよ。笑ったとこなんか、見たことない」
「いつも一人ってことか?」
俺は俄然興味が湧いてきた。
「聞いた話だと喋んないし、必要なこと以外ほとんど反応しないってさ。教室と旧校舎の向こうっ側としか往復しないらしいよ」
「あっちに何かあったか?」
アーティはこういうことをよく知っている。
「『道場』がある。あいつ、弓ってのやってんだよ」
「『道場』? 弓って?」
「的に向かって矢を飛ばすんだ。その練習場が、『道場』」
「アーチェリーか?」
「違うみたいだ。誰もいないとこで黙ってずっと打ってんだってさ」
「物好きなやつだな」
ダンは興味も無さそうだ。
「とにかくあいつは外れだよ、それよりチャーリーはどうだ? あいつなら歯応えありそうだ。あのお高くとまってる顔が泣くのを見たくないか?」
みんなの気はチャーリーに行っていた。なら競争率は低い。
「俺はあのハーフにする」
みんなが驚いて振り向いた。
「チャーリーはどうすんだよ」
「お前たちだけで楽しめよ。俺はあっちに興味が出てきた」
「キース、おまえも物好きだなぁ」
それで決まった。
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