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 カイは首を横に振った。 「俺を知らない? キース・ガーランドだ、知ってるだろ?」  例え俺を知らなくったって、ガーランド家を知らないわけが無い。親父は祖父の栄光に縋ってるバカだが、実権は副知事の母親が握っている。親父はただ大人しくいればいいだけ。 「ルーシー・ガーランド。それなら分かるだろう?」  親の名前を出すなんて俺もどうかしている。けど俺を知らないって言うのが気に食わなかった。それでも知らないと首を横に振る。 「お前、何も知らないのか? 何とか言えよ!」 その顔がふっと笑うと、荷物を担ぎ直してまた歩き出した。 「この野郎、バカにしやがって!」  ここまで俺をコケにしたヤツはいない。バカも嫌いだが、バカにされるのはもっと嫌いだ。後ろから殴りかかろうとした俺はヤツが荷物を下に置くのを見た。決して慌てちゃいなかった。  そして俺の体は床に叩きつけられていた。  目を開けると、不思議な部屋に俺は寝かされていた。天井は木だ。寝てるのはベッドじゃない、柔らかいマットに硬い枕。少し重いブランケットみたいなもん。  腰が痛い。 「目が覚めた?」  そばに女の子が座っていた。東洋人じゃない、普通のアメリカ人だ。赤毛の目がパッチリした美人。でも赤毛らしい気の強さを感じる。 「ここは?」 「あなた、キース・ガーランドでしょ」 「ああ、そうだ。俺の質問に答えろよ」 「噂通りね。初対面でもう命令口調? 気を失ったあなたを兄が担いできたの。 自分のせいだって言ってたわ。あなた、どういうつもりで兄に近づいたの?」  どういうつもりって……。言えるわけ無いだろ、お前の兄貴で遊ぶためだなんて。      
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