第1部 第1章 運命と結婚すると私は

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「おはよう」 私が目を覚ますと、まだ指はつながれていた。 しかし灘さんはベッドサイドに座っていて 私の腕は布団の中にある。 「あのままでは風邪をひくだろう?」 あまりに甘やかせる声が囁く。 「おはよう、彩綾。朝食に行こうか」 「はい」 むにゃ、とベッドから起きあがる。 「……////」 灘さんは目をそらした。 頬を染めている。 「……」 私はなんとはなしに下を見た。 襟元だ。少しだけ寝乱れていた。 「灘さん、手を離してください」 「やだ」 「着替えられません」 「……くそっ!」 手を離された。 「灘さん」 「なんだ」 「着替えてきます」 「……ああ。俺が向こうで着替えるから彩綾はこのままいなさい」 「でも……」 「鏡が使いやすい方が良いだろう?」 「ありがとうございます」 「どういたしまして。君は礼儀正しいな」 慎み深いし、と足され 私は切なくなる。 灘さん、私は。 結婚式に男が乱入するような女です。 それなのに、天女をもてなすみたいに うやうやしくされたら 気が狂いそう。 私は立ち去る背中を見送る。 いつか あなたを愛してしまうだろう。 不器用で誠実で 熱くて激しいその魂の器ごと。
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