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いよいよ新居に向かう。
夫婦生活が始まる。
玄関で
「彩綾」と声をかけられた瞬間
「!」
抱き上げられた。
いわゆるおひめさま抱っこだ。
「な、灘さん!?」
「新婚とはこういうものだろう」
抱き上げられたまま、家に入る。
「君は俺の奥さんだからな」
「////」
「君は寝室で休むといい。
俺はこっちで寝る」
「え」
「ベッドが一つなんだ」
セミダブルなのは、灘さんの身長が高いためで、
昔からの家具だ。
灘さんは、私と結婚するにあたり、
生活空間を変えなかった。
彼は知っていたのだ。
航さんが来ることを。
私を浚いに来ることを。
だから灘さんは、結婚式のあと、家に帰る時は、自分ひとりと決めていた。
私は彼の予想に反し、妻となった。
「灘さんがベッドで寝てください」
「君も寝るならな」
「っ」
「いや。冗談だ。君と一緒に寝たら天国の中に血の池だ。
抱きしめたくなるだろう。
我慢するのもしんどいからな。
俺はソファー……っ、彩綾っ?!」
私は灘さんにしがみついた。
ぎゅ、っと。
「ベッドでいいの」
「……彩綾」
「灘さんの家じゃあないですか」
「今日からは君の家だ。
君を護るためにある空間だ。
君を傷つけたくない」
そう囁きながら
私を気遣いながら
抱き上げたまま
寝室に運ぶ灘さん。
私をベッドの上に静かにおろした。
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