第1部 第1章 運命と結婚すると私は

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いよいよ新居に向かう。 夫婦生活が始まる。 玄関で 「彩綾」と声をかけられた瞬間 「!」 抱き上げられた。 いわゆるおひめさま抱っこだ。 「な、灘さん!?」 「新婚とはこういうものだろう」 抱き上げられたまま、家に入る。 「君は俺の奥さんだからな」 「////」 「君は寝室で休むといい。 俺はこっちで寝る」 「え」 「ベッドが一つなんだ」 セミダブルなのは、灘さんの身長が高いためで、 昔からの家具だ。 灘さんは、私と結婚するにあたり、 生活空間を変えなかった。 彼は知っていたのだ。 航さんが来ることを。 私を浚いに来ることを。 だから灘さんは、結婚式のあと、家に帰る時は、自分ひとりと決めていた。 私は彼の予想に反し、妻となった。 「灘さんがベッドで寝てください」 「君も寝るならな」 「っ」 「いや。冗談だ。君と一緒に寝たら天国の中に血の池だ。 抱きしめたくなるだろう。 我慢するのもしんどいからな。 俺はソファー……っ、彩綾っ?!」 私は灘さんにしがみついた。 ぎゅ、っと。 「ベッドでいいの」 「……彩綾」 「灘さんの家じゃあないですか」 「今日からは君の家だ。 君を護るためにある空間だ。 君を傷つけたくない」 そう囁きながら 私を気遣いながら 抱き上げたまま 寝室に運ぶ灘さん。 私をベッドの上に静かにおろした。
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