俺の夢の在り方

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俺がそれを口にしたのは、高校2年の冬期休暇前。 晩飯を終え、片付けも済ませた寛ぎの時間、大して面白くもないテレビ番組を垂れ流し、ただそれを視界に捉えていただけの母が当然の如く話題にしてきた。 「あんた、進学するの?就職するの?」 高校3年になれば直ぐにでも持ち上がる卒業後の進路について、俺と母との間で特に上る事の無かった話題だ。 母は20歳で俺を産んでから22歳で離婚し、ずっと1人で俺を育ててきた。 全く以て裕福とは無縁で、正直ど貧民。 毎日笑ってなんか居られなくて、俺に他の家庭と差の無いように、俺が周りと比べて悲観しないように、母は家事と仕事と父親代わりを努めた。 特に仲が良い訳でもないが、悪い訳でもない。 過保護過ぎる事も放任されていた訳でもない。 自分の事よりも俺を優先する母を見ながら、俺は別段ワガママも言わずひねくれる事もなく、当たり前のように17歳にまで育った。 母が俺の進路を心配していない訳がない。 手元で弄っていたスマホから視線を上げると母はじっと睨み付けるような真剣な眼差しで俺を見ていた。
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