俺の夢の在り方

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レッスンと呼ばれる授業を受けながら、事務所側から声が掛かるのをひたすら待つ。 自分から名乗り出るなんて出来はしない。 事務所の名前を背負うという事が付加されるのだ、下手くそで礼儀知らずは送り出せないというのが事務所の意向だ。 上下関係に煩いのも芸能業界らしい。 俺は小さな事務所に入り研修生として2年が過ぎていた。 事務所マネージャーたちの覚えも良くなってきた。 声優オーディションにも数回行かせてもらえている。 だけどまだまだ芽が出る気配など皆無。 日々生活のためにバイトに励む。 遠く離れてしまった故郷に帰省する金も貯められない。 専門学校卒業以来、母には会ってもいないし連絡すらしていない。 あの時の2万円は絶対に使わないと誓っている。 どうしているだろうか? 母の事だ、元気で一人のびのびとしているだろう。 たまに送り着けてくる菓子類に付箋で俺への近況を問い掛けてくるが、返事を期待しているようなものではなく、LINEなどでは殆ど何も報せて来ない。 俺から、連絡してみようか。 ふとそんな事を思った。
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