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『はぁーい真希ちゃん。ママですよー』
「ママだ!」
『ママは今、天国に来てまーす』
天国と言っても背後の壁にお花畑の写真が貼り付けてあるのみ。おまけに母の頭の上には黄色い輪っかが浮かび、背中には白い翼が生えていた。恐らく厚紙で作ったのだろう。それでも三つの私を騙すには十分なクオリティーだった。
『天国ってなかなかいいところよー。ママ気に入っちゃったから今日からここに住むことにしたわ』
「マキも行くーっ」
画面の母に健気に話し掛ける幼き私。そんな私の行動はお見通しだったらしい。
『あらあら、真希ちゃんも来たいの? でも天国はずーーっと良い子にしてた人しか来ることができないの』
「イヤ、マキも、ママのとこ、行く……」
『これからパパとママの言うことをちゃんと聞いていたら、いつかきっと来ることができるわ。だから泣かないで。何かあったらパパに頼んでママを呼んでね。すぐに真希ちゃんに会いに行くわ』
「……うん!」
それが母が残した最初の動画。
画面の中の元気そうな母の姿を見て、私の中の悲しみはすっかり吹き飛んだ。
いつでもママに会える。母の遺した動画を再生すれば、いつでも母は再生するーー
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