2、医師の意志

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「わかりました。私が特殊な魔法をおかけしますので、2ヶ月の修行で何とかなるようにして差し上げます」 ホイットニーは悩んだ末にそう言った。ホイットニーの敬語が徐々にこなれていくのを見てセーファスは笑いをこらえている。いくらサービス業とはいえ、180歳の大長老が高々30代の若造に敬語で下手に出る様は滑稽というほかない。 「ただ……」 ホイットニーは言いにくそうに話を切り出す。 「ただ、何ですか?」 高橋は訊き返す。 「おぬ……いや、高橋様、本当によろしいんですか?率直に申して、あまり向いているとは思えませんが」 「いいんです。私の夢、悲願をぜひ叶えたいんです。叶えるにはこの方法しかないんです」 ホイットニーは下を向いて深いため息をした。そして高橋に念を押す。 「結果、どのようになっても責任は取れませんよ。それでもいいんですね?」 高橋は頷いた。 ホイットニーはそれを見て、棚に立てかけられていた杖を持ってきた。右手に杖を持って目を閉じ、杖に向かって念じ始める。 「くわぁーーーーーーっ!」 そうホイットニーが言うと、天井から高橋の頭上に一筋の光が差し込んだ。光は数秒で消えた。 「はい。これで高橋様は2ヶ月の修行後に希望の職業に転職できるようになりました。修行、頑張ってきてくださいね」 「ありがとうございます」 高橋は答えた。 「お待ちください」 高橋が帰ろうとしたところをセーファスが呼び止める。 「お会計は相談料と施術料、合計で86400円になります」 「は?」 高橋は意外なことを言われ、ぽかんとした。 「いや、あの……当神殿……いや、転職相談所では、伝説の勇者御一行様以外の方からは料金を頂戴しておりまして……はい……こちらも生活があるので」 「先に言ってくださいよ」 高橋はそう言うとヴィトンの財布を取り出し、一万円札を9枚抜き取った。いきなり言われてこの場でこの大金を出せるのだから、さすがは医局長だ。 「ありがとうございました。では2ヶ月後、修行の成果が出たらまたこちらへお越しくださいね」 そうセーファスが言い、お釣りの3600円を渡すと、高橋はそそくさと転職相談所をあとにした。
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