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4、夢への階段
慶次は病院を飛び出した後、死力を尽くした。何分期間が短い。その中で2つの職を極めるのは至難の業である。慶次は2ヶ月間、ある時は伊賀の山奥で、ある時は夜の港で、ある時は地下に潜って厳しい修行を積んだ。弱音は1つも吐かなかった。修行の際には外国人が一緒になることもあった。しかし、英語、ドイツ語、中国語をペラペラと話すことのできる慶次にとってはさして高い壁ではなかった。
2ヶ月の時はあっという間に流れ、再びマーダの転職相談所に慶次が現れた。
「今一度伺いますが、高橋様にはこの職業、向いていないと思われます。それでも本当によろしいんですね?」
慶次はホイットニーを真っ直ぐ見つめながら黙って頷いた。
「ではその転職の希望、叶えて差し上げましょう。くわぁぁーーーーーっ!」
慶次の頭上に禍々しい光が降り注いでいる。
「これで転職の儀式は完了です。ありがとうございました」
再び慣れない笑顔に戻ったホイットニーが明るい声であいさつをする。
「ありがとうございました。お代は?」
「前回のお会計で今回の分も賄っておりますので、本日は結構です。お疲れ様でした」
慶次にセーファスがそう説明すると、慶次は軽く会釈をして神殿をあとにした。
「大丈夫なんですかね?」
セーファスが不安そうにたずねる。ホイットニーの適職診断はほとんど外れないからだ。
「いつもの光と違って禍々しかったのう。でも致し方あるまい。本人の希望なんじゃからの」
ホイットニーはため息をついた。
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