2

3/3

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「言いつけをまもらなかったわたしがわるいのです。いえにかえれなくなってしまいました」 「案ずることはありません。のれんにうでおし、鬼にかなぼう。御宅までおくりとどけましょう」  鬼はそういうと、ひょいとひだりのうでにシンデレラと三匹のおともをかかえ、みぎてにつかんだかなぼうをぐいとのばしました。  かなぼうはぐんぐんとのび、むこう岸にちかづきます。 「えいやっ」  岸にひっかかったかなぼうは、ぐいっと竹のようにしなり、ぱちんと弾けて鬼ごと皆を空中にほうりました。 「とてもすごい風がふいたわ」 「風じゃあない。ぼくらが飛んでいるんだよ」  あるいてきた道のりをはるかかなたの下にながめながら、あっというまにシンデレラの家につきました。  すこしおくれて、とちゅうからひとりで飛んできた鳥も、ぱたぱたとまいおりました。 「それではおじょうさん。わたしはこれで」  鬼はシンデレラをいりぐちまで見送ると、わかれのあいさつをしました。犬は犬らしくワンと吠え、猿はキイと鳴きました。 「わたし、あなたと離れるのはさびしいわ。またあえるかしら」 「いや、もうお会いすることはないでしょう。もとよりうつくしいあなたに、みにくいわたしでは分不相応。つかのま、しあわせな時をすごせた。それだけでじゅうぶんすぎるくらいです」  鬼はそういって、シンデレラから目をそらします。シンデレラはとてもかなしくなってしまいました。 「不釣り合いだなんてこと、あるものですか。あなたに出会えたとき、あなたと踊っているとき、あなたにかかえられて空をとんだとき。どれも、あんなにすばらしい気持ちになれたのは生まれてはじめてです。だいたい鬼さん、ここからどうやって島までかえろうというの」 「ごあんしんを。釈迦に説法、鬼にかなぼう。このかなぼうさえあれば……やや!」  鬼はじぶんの右手をみやり、泡をふきました。どこで落としてしまったのか、なんとかなぼうがないのです。 「おい、そこの鬼よ」  あわてながら鬼が顔をあげると、シンデレラのうしろに、魔法つかいがぬうと立っていました。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加