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あまりに桃がおもいので、シンデレラはとちゅうでひとやすみし、道のむこうにみえるじぶんの家をながめました。
なんだかふしぎなきぶんになりました。すこしまえにも、おんなじことをしたようなきがするのです。おもたいなにかを持ってかえって、「だれか」とにこにこと、それをあけて。
けれどもきおくは、すぐにふかい海にとけだし、うすまってわからなくなりました。
それは父の慈愛のように、母の尊厳のように、あたたかくておだやかな海でした。
「……よっこらしょ」
シンデレラはつぶやくと、ふたたび家にむかってあるきだしました。たちどまるわけにはいきません。
だって、その家には。
これからながい苦楽をともにするはずの、たったひとりのひとがまっているのですから。
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