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「……は、はい、確かにこれは娘の傘です。実は半年前、あのバス停に飲酒運転のトラックが突っ込んで、私の迎えを待っていた月子が……。そうですか、あの子の忘れ物があったなんて。本当に……本当にありがとうございました。でも、見ず知らずのあなたが、どうして……?」
「あぁ、気にしないで下さい。性分なもんで」
俺は月子の傘を父親に渡し、その場をあとにした。
昨夜の雨は止み、雲の隙間からあたたかい光が射す。風の音にまぎれて、月子の声が聞こえた。
(あかり、ありがとう。月子をみちびくお星さまになってくれて、ありがとう)
俺はふたたび歩き出す。
今日も何処かで彷徨うこころを導く、明かりとなるために。
そして君のもとへ……、いつか。
【終】
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