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月子は飴玉の味を確かめるような神妙な顔つきで、俺の名前を何度か呟いていたが、やがて「お顔ににあわず、ずいぶんかわいらしいお名まえですね」と俺に向かって財布を放り投げた。
「こら、物を乱暴に扱うな! こいつが可哀想だろ」
「『こいつ』? かわいそう? まるでおさいふにも、かんじょうがあるように扱うんですね。モノですよ。……きもちなんて……心なんて、ありません」
「バカ。物にもちゃんと宿るんだよ、持ち主の心が。見ろ、ここに傘の忘れ物がたくさんあるだろ?家に帰りたいって、みんな泣いてる。俺にはわかるんだ。信じられないだろうけど……、月子?どうした?」
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