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これって、偶然? ……じゃないわよね。
だから、ある日の昼休みが小谷と重なった時、
休憩室で総菜パンに噛り付く彼に、ちょっと尋ねてみた。
「小谷さん」
狭いスペースに彼以外の姿がないことを確認して、小さく声を掛ける。
「あぁ、お疲れさまです」
だが彼は、屈託なく、いつもの笑顔で答えてくる。
その自然な笑顔に、思わず沙紀は、少しばかり言葉を迷った。
しかし、
「あの、私の勘違いかもしれないんですが、
もしかして私のこと、フォローしてくれてますか?」
表情で愛想を作るのも苦手だが、言葉も愛想は作れない。
だがそんな彼女に、小谷は、やっぱり人懐っこい笑顔を向けてきた。
「フォローってほどの事じゃないですよ。
ただ人間、誰でも得て増え得てはあるでしょ?
だったら、誰かの不得手は、得手な人間がやればいい。
持ちつ持たれつ、それが職場の潤滑油になる訳だし。
それに俺、吉田さんは、そのままでもいいって思うんですよ。
仕事は、むしろ出来る方なんだから」
えっ……?
わずかに目を見開いた沙紀は、完全に言葉に詰まった。
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