6 氷の女王(つづき)

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二つの学校の掛け持ちは、思った以上に大変なものでもあった。 お蔭で、華やぐキャンパスライフなどとは程遠い日々を過ごすことになる。 しかしその努力も実り、彼女は、大学三年時には複数の資格を取得。 こうして大学卒業後には、自動車メーカーへ、すんなりと就職も決まった。 あぁ、これで不要な人間関係に神経をすり減らさずとも済むだろう。 しかし、この安堵は、 学生という小さな世界から見ていた社会の片隅の幻想に過ぎなかった。 そして、それが分かったのは、新人研修を終えて配属先が決まった時のこと。 はっきり言って、沙紀は、出された辞令を手に文字通り我が目を疑った。 既に簿記の資格も得ていたし、それを売りにして就職活動もした。 だから彼女は、当然、自分は経理に配属されるものと思い込んでいた。 ところが、研修を終えて決まった配属先は、なんと販売店事務。 もちろん営業職ではないため、直接の接客はない。 だがそれでも、客やスタッフとの接触が皆無という訳でもない。 いや、むしろ想像以上に客との接触を余儀なくされた。
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