6 氷の女王(つづき)

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そして上司から繰り返し言われ続ける、この言葉。 もっと愛想よく、笑って。 しかしこれは、無口な人間にお喋りになれというのと同じくらい 彼女には難しく、辛いこと。 だが上司に限らず、週に一度は必ず誰かが彼女に、これを言ってくる。 恐らく、彼女の周囲の人間からすれば、 若い女性が笑顔を作ることなど、呼吸をするのと同じくらいに簡単だと 思っていたのだろう。 だが彼女の現実は全くの真逆で、それは日々の大きなストレスとなっていく。 そうしてストレスを溜め込むだけの日々を送ること、約一年。 彼女が、そろそろ限界を感じ始め、「転職」という文字が頭を掠めるようになった頃。 一人の営業が、転勤で店にやってきた。 名前は、小谷 崇。 小柄で、クリッとした目をした童顔。 営業職らしく、明るく溌剌としているが軽さは感じられない。 そんな彼が移ってきて、半月もした頃。 例によって、この日も彼女は また上司に呼び出されて小言を言われていた。
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