6 氷の女王(つづき)

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「俺もさ、何もない時もニコニコしてくれとは言わないし、 身内同士のやり取りの時に、明るく振る舞えとも言わないよ。 けど、ウチは客商売なんだよ。 お客との電話のやり取りは、直接のやり取りよりも ずっと明るく対応しないと伝わらないくらい、もう分かってるでしょ?」 ため息交じりに言う四十がらみの上司は、 昨日、年配の客からクレームを言われたと伝えてくる。 「吉田さんもさ、ここに来て一年じゃない。もう新人じゃないんだから、 お客と接触する度に、他の人間にフォローさせるようじゃ困るんだよね」 はい、すみません。 素直に頭を下げるが、正直、彼女の中では うんざりと困惑が複雑に入り混じっている。
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