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興奮のあまり自分でも意味の分からない声を上げながら、腹の底から湧き上がってくる熱に急かされ転がるように駆けだす。脚で草むらをかき分け、腕で風を切りながら、自分でも驚くような速度で一息に丘を駆け上がった。
「マジか……マジでファンタジーかっ! すっげぇええ!」
――夢だけど夢じゃなかった……今なら分かるぞ、その心!
峰が長く続く山々の麓、くり抜かれたように広がっている盆地にその大樹は起立していた。
雲を突き抜けどこまでも伸び上がっているその頂上は、どんなに身体を反らし、首を伸ばしてもちらりと覗うことすらできず、まさに世界を覆い尽くさんばかりに広がった樹冠は山頂にまで影を落とし、ざわざわと風に遊ぶ葉音がここまで聞こえてきそうだ。
大樹の根元から波紋状に広がっている街並みは木造りの家が多く、その間を石畳の道が整然と走っており、その中で多種多様な人影がひしめいていた。
腕の部分に大きな翼を持つ少女がベランダから屋根へ、さらには空へと自由に飛び回っているのが見えたかと思えば、日に燦然と輝く銀色の甲冑を纏った下半身が馬の青年が微笑みを浮かべながら街道を行き、その背には側頭部から大きな巻角を生やした赤肌の女性が蕩けるような笑みを湛えて跨っている。
視線を街の外れに移すと、そばを流れる大きな河に大小たくさんの木造船が停泊しており、河岸には石造りの大きな建物が並び、賑やかな港の様相を呈している。
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