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リィルさんの手が身体の上を滑る度に全身から力が抜け、思考がぼやけていく。熱っぽい吐息が耳をくすぐり、ぞわぞわとした感覚が身体中を走ると腰からくだけていくような心地になった。
「だめぇ、お願いですからぁ。やめてぇ……」
先程ガロンさんに頭を撫でられた時も思ったが、獣人族がそうなのか、それともこの身体の性なのか、頭や腹なんかを撫でられると途轍もない幸福感に襲われるようだ。
「んふ~。そんなに潤んだ目で言われたら余計に撫で回したくなっちゃうよ。んふっ、んふふっ。頭が良いの? それともお腹?」
「ど、どっちも、だぁっぇ」
「どっちもだなんて、イディちゃんは欲張りさんだねー。いいよ、いっぱいナデナデしてあげるから。気持ちよくなちゃって、いいんだよ?」
「ああぁあぁあ~~」
――堕ちるぅ! このままじゃイヌ堕ちしてしまうぅ!
野生であったことなんて一度もないのに、今確実にワタシの中の野生が失われつつあるのが分かる。
この幸福感は危険だ。これに囚われたら最後、リィルさんにお腹を見せるのが好きになってしまう。そして無駄な装飾がついた必要のない服を着せられて、散歩という名の乳母車の運送に出かけるようになってしまう。
――やめて! ワタシにペッティングする気でしょう? いぬのきもちみたいに!
(……緊急時程、思考が明後日の方向にぶっ飛ぶのはどういうことなんだろうか)
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