あか

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 特に理由も無く、炊き込みご飯を作ろうと思った。  思い立つとすぐ行動に出るのが私の長所だ。  さっそく作り方を調べてみる。  いろいろと具の入ったものから銀杏ご飯のようなシンプルなものまで、炊き込みご飯といっても様々あるのを知る。 「鯛めしも炊き込みご飯なんだ。あ、栗ご飯もいいなぁ」  それはまるで、人の個性のようで面白い。  様々な人間がいるように、様々な炊き込みご飯がある。  もしかしたら、人の数だけ炊き込みご飯は存在するのかもしれない。  ならば、私だけの炊き込みご飯を作ってみよう。私らしい、私だけの炊き込みご飯。  冷凍庫から腿肉を取り出して、水を張ったボールの中へ放り込む。 「少し冷たいかもしれないけれど、我慢してね」  彼に話しかけるように優しく、私は囁く。料理には食材に対する愛情も大事なのだ。 「そういえば……」  せっかく料理をするのだから、彼にも食べてもらおう。一人で食べる食事は味気ない。  彼に電話をかける。出ない。ここのところ、いつも電話が話し中なのだ。 「最近、彼に逢ったのはいつだったかしら?」  なんだか、その辺の記憶が曖昧だ。もう随分と逢っていないような気もするし、ついさっきまで一緒に居たような気もする。  私は多分、疲れているのだと思う。  窓の外を見ると、少し陽が傾いてきたようだった。  家の冷蔵庫の中は肉しか入っていない。  これでは私らしい炊き込みご飯をつくるのは無理なので、スーパーへ食材の買出しに行くことにする。  ワインレッドのロングスリーブワンピース。  お気に入りの外出着に着替えると、ハンドバッグを持って街へ出た。
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