大切な君

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「いや、魔法使いは・・・・・・二度生まれるって聞いたことない?」 「ええ・・・・・・」 「リューク様は伯爵家の跡継ぎですから、秘密の名前か何かを父上から授かったのではありませんか?」  そうだと頷けない、当主しか知らないはずの事項を何故知っているのだろうかと思うが、それはやはり国王陛下の側に仕えているからだろう。 「そういう魔法使いの特殊事情が二十歳にあるんだよ。姫様は、二十歳になったら名前を授かって、もう一度忠誠を誓うか、別の道を選ぶはずだよ。でもこの調子だったら、必然的に忠誠だろうけどね」 「どういう・・・・・・?」 「石に魔力を溜める方法を教わった時に、何かいわれませんでしたか?」  古い記憶を思い出してみる。アインが教えてくれたのだ。バリンバリン割って、魔力の大半を無駄にした時に、アインはこめかみを掻きながら言ったのだ。 『こうやって魔力を溜めることが出来れば、役立つし、いいこともあるんだけどね』 『いいこと?』 『まぁ、でもこれ覚えるのにリュークは不器用だから一年くらいかかりそうだよね。王都で住めばいいし、その方がいいかもしれない』  確かそんな思わせぶりなことを言っていたような気がする。  領地はあっても、エリザは王都で住むだろうから、気にしなかったのだ。 「魔力石を作れればいいことがあると言っていた」  ロウは、「それ言ったのアインだろ?」と訊ねるから頷いた。 「俺が不器用で教えるのが面倒だから、もういいんじゃないかと言ってた」 「言いそうだよねぇ。リューク、魔力石を作れれば、姫様の魔力を持て余して発散させなくても大丈夫なんだよ。もし、リュークが姫様の受け皿として力を発揮できなくなっても魔力石さえ作れるなら魔力の暴走を抑えられるから、領地に引っ込むことも、忠誠を誓わなくても大丈夫なはずなんだ。魔法使いが忠誠を誓うのは、自身の魔力の暴走を止めるためでもあるからね。リュークも気付いているだろう? 魔法使いは二度めの生の後、人によるけれど、とても魔力が増えるんだ。・・・・・・ああ、エドがここにリュークを送って来たわけがわかったよ――。この『レオンの眠り森』は、唯一魔力石が壊れても大丈夫な場所なんだよ。眠りの森は、どんな生物も魔物になりえない、竜の魔法がかかった場所だからね」
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