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ああ、悪い夢を見ている――。夢だとわかっているのに、この先の出来事もわかり切っているのに、私はその人を止めることが出来ない。
目を醒ますことすらも――。
『逃げて!』
捕らえられていた子供達を助けるために、魔法使いが行ったのは、自分の命を媒介にした魔法だった。範囲をサーチされないために、沢山の子供たちはいろんな場所に飛ばされたはずだ。その中には、人のいない砂漠や狼の沢山いる山脈などもあっただろう。
それでもその人は、魔力を媒介とした国を護る防護壁を保持するために、魔力を搾取され続ける子供達の未来に光を――と、一縷の望みをかけたのだった。
『幸せになって――』
それが多分末期の声、私はその声を聞きながら、最後の一人として空間を渡った。
衝撃が、全身を包む。傷みに呻く間もないまま、気を失った。
私は、力が強かったから、防護壁と呼ばれる魔法の障壁を突き破ったのだと知ったのは、意識を取り戻した一週間後のことだった。
自国の魔法防護壁は、私たちを助けてくれた魔法使いによって破られていたが、飛ばされた先にも防護壁があったのだ。
「――エリザ姫?」
あ、と意識を戻した私に、その人は胡乱気な眼差しを向けてきた。
差し出されたハンカチを受け取って、居眠りをしながら、よだれをこぼしていたことに気付く。
「あ、ありがとう・・・・・・、リューク。紅茶のおかわりを頂けるかしら?」
ハンカチでよだれを拭き、そうお願いするとリュークは、「会議を進めてくれ――」と周りに命じた。
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