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「お父様――」
私はエドワードを、知ろうとしていなかったのだ。未だに、その虹彩の瞳にすくみはするものの、私の中にあった怯えは形を潜めた。
「エリザ、俺の可愛いお姫様。二十歳になったらリュークのところにお嫁に行きたいかい?」
エドワードは、わかっていることを訊ねてくる。
私は、大きく頷いた。アインが髪をクシャクシャと撫でて、「残念だな、僕のものになったらいいのに」と嘘っぽく笑う。
「エリザ、一年後、君を俺の妻にするよ」
確認するようでいて、リュークは断言した。
「はい――」
私は、エドワードに抱かれながら、リュークの口付けを頬に受けた。
「こいつさ、もう領地のほうに二人でゆっくりできる別荘を建ててるんだぜ」
アインが、内緒話のように私に耳打ちしてくるのを聞いたリュークは、耳を僅かに赤らめてゴホンと咳ばらいをした。
ああ、リュークの婚約者のための屋敷というのは、私のためのものだったのかと合点がいった。
そうだ・・・・・・。リュークを愛する会に、どう報告しようと私は少しだけ蒼褪める。
抜け駆けしたことになるのだろうか――・・・?
セイ様、あなたの望んでくれた私の幸せが見えるでしょうか。
私は、不器用な父親と、果たしていくつなんだろうかと思える兄のような人と、凛々しく逞しい私の愛する人に囲まれて、明日も明後日も続くように願える日々を送っています。
あなたの未来見に、私の幸せな姿が見えたのだと信じています。
ありがとう、セイレーン。私のお母様――。
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