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想像はしていたが、アインもやはり国王陛下(エドワード)と同じように不老不死なのだろう。出血の量が、痙攣をしていてもおかしくない、いや、鼓動を止めていておかしくないくらいなのだ。
エリザがパニックから呼吸できなくなっていることに気付いて、俺を信じて欲しいと願って、吐くことに集中させた。やがて、エリザが落ち着いてきたから、エリザの手を握りつつアインに治癒の魔法をかけた。
レイザックの血に流れる魔法の一つで、他人の魔力を扱うことが出来るだけでなく、それを本来持っていない治癒に使えるというものだ。ただ、この魔法は諸刃の剣と言っていい。
レイザックの血を護るため、秘密にされている。
俺も実家にいるときに、父に聞いたもののそんなことが出来るようになるとは思っていなかった。他人の魔力を受け入れること自体、禁断の魔法なのだ。父も、俺もそのことは知っていても国王陛下が使うまで、本当にある魔法だと思っていなかった。
この国には、貴族はほとんどいない。けれど、そのどれもが建国の時に国王陛下の命令に従って、国に血を捧げたという。
国王陛下が死んだ際に、国を護るための人柱のようなものになるという、血脈に流れる契約だという。
魔力はエリザから優しく流れてくる。アインの血をとめ、身体を動かせるほどに回復したところで、俺は自分の激しく痛む腕も治した。きっとエリザは立つことも出来ないだろう。彼女を抱き上げることが出来る好機を逃すつもりはない。
真横にある顔にドキリと心臓が跳ねた。こんなに側に寄ったのはいつ以来だろう。顔を傾けるだけで、小さな赤い果実のように瑞々しい唇に届きそうだ。
エリザは、恥ずかしそうにそっぽを向く。逃げてしまった小さな小鳥を捕まえるように、俺は策を弄した。痛みに呻く振りをしたのだ。
痛みなどもうないのに――。
案の定、心配したエリザがこちらを向いた。真剣な顔は、もう涙でぐちゃぐちゃなのに、何故こんなに愛おしいのだろう。
愛おしい・・・・・・。
俺の心がエリザを求めていた。エリザの唇にそっと自分の唇を寄せた。
触れるだけの口付けだ。
泣きたくなる――。愛おしさが溢れてしまいそうになる。
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