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俺は、国王陛下(エドワード)と約束をさせられていた。二十歳になるまで、エリザに愛を告げることも、愛を確かめるための接触もしてはいけないと――。
「エリザ、愛しています――」
エリザは、私の告白に止めていた息を飲んだ。花が咲きほころぶ瞬間というものがあるというのなら、今この時だろうと思えるほどの微笑みを浮かべたエリザの額にコツンと額を合わせた。
「私はっ」
慌てたようなエリザに、俺は少し意地悪なことを言った。
「いいです、アインのほうが包容力があって、大人で・・・・・・目尻の黒子が色っぽいとかいわれているのは知っています――。でも俺は・・・・・・」
アインのことも好きだと知っている。でも俺のことだって、想ってくれていると信じている。
「――ちょっ、婚約者の横で何してるのか聞いていいかな――?」
目覚めていた癖に目を瞑って楽しんでいたアインが、呆れたように言葉を掛けてきたから、エリザは驚いて悲鳴を上げた。可哀想に、半分以上涙目だ。
アインに文句を言われても、俺は全く気にならなかった。
エリザを抱き上げて、もう一度口付けると、エリザは手で俺の顔を押し返してくる。そちらのほうが余程心が痛い――。
国王陛下を心配して巨大すぎる最早天に届こうかとしている魔物を必死で見つめるエリザ。エリザはいつも国王陛下を想っている。
だれかを投影しているような素振りもないでもないが、俺はエリザに昔のことを聞いたことはない。
言いたいと、俺に聞かせたいと思うまで待っていようと思う。
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