魔物退治

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 国王陛下のことは、本能的に恐怖している素振りをみせる。俺も魔法使いの端くれだから、国王陛下が常に魔法をまとっていることは知っている。けれど、なんのために魔法を使っているのかはわからない。 『愛の伝道師、エドワード』  そう名乗りながら、多分だれよりも愛からは遠いのだろう。  巨大な魔物は、ハラハラと幹を崩壊させながら、その育ち過ぎた身体を砕けさせていった。俺も、アインも、多分この結末は目覚めた瞬間に気付いていた。  強大な魔力は、わが身を滅ぼすことになりかねないと、エリザを見ていればわかることだ。長い時を生きてきた国王陛下が、魔力と同じくらいの負の感情を持っていたとしても不思議ではない。  エリザを愛しているというだけで、俺はあんなに負の生気を生んでいたのだ。人を想うということは、どちらに感情が転んでもおかしくないことなのだ。  真っ白の木屑が降り積もるそこは、年数を経た後、とてもいい畑になったという。本当は森があったのだけど――。
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