大切な君

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「お父様、私、リュークのことが好きなの」  エリザは、国王陛下に言い募った。アインはまるで他人の話のようにクスクスと笑って聞いている。 「おや、二十歳まで待てなかったの、リューク?」  国王陛下の目が俺を見る。口調は軽いのに、何故だろうか背中を汗が流れた。 「すみません、二十歳まで待つという約束だったのに・・・・・・破ってしまいました――」  エリザは、心配そうに俺を見つめる。二つの相反した目に俺はジッと耐えた。 「まぁ仕方ないよ。命の危機は種としての生存・・・」  アインが俺を憐れに思ってか、どうだかわからないが、援護しようとしたところを国王陛下が切り捨てた。   「どうでもいい――。アイン、お前の愛し方が足りなかったんじゃないのか?」  国王陛下には、俺の言い訳などどうでもいいのだ。俺が約束を守らなかったことが、許せないのだろう。 「お父様、ごめんなさい。でも――」 「ああ、エリザはいいんだよ。だってリュークは、運命の人だからね。『愛の魔法使い』第一号の私が、選んで君の魔力の受け皿にしたのは、けして遊びでもなんでもないんだよ。君はリュークという運命の番がいるから、君の母親であるだろう魔法使いがここを選んだだろう」  エリザが謝るのは、許せるらしい。  国王陛下が告げたことは、エリザにとっては初めて聞くことだろう。俺は既に二十歳になったときに聞かされている。  エリザは、遠い記憶をたどっているようだった。まだ小さかったエリザは、覚えていないかもしれない母親らしき人のことは、国王陛下だってあまり知っているわけではないようだった。  エリザ、君に初めてあったとき、君は小さくて、稚くて、この世界にこんなに愛しいものがあるのだと知った。  国王陛下たち愛の魔法使いは、運命のように出会う惹かれ合う二人をさして、『運命の番』という。    二十歳になったとき、俺は国王陛下に尋ねた。 「俺の番は、エリザ姫ではないのですか?」  その頃は、もう彼女のいない人生など考えられなかった。エリザを得ることが出来ないのならば、騎士として彼女を一生守っていこうと覚悟を決めて、俺は国王陛下の元を訪ねたのだが、そこにはアインもいた。 「お前がそうだと思うのなら、エリザはお前の運命なんだろう」  よくわからない答えが返って来た。
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