大切な君

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 俺にもわかってしまった――。  二十歳までエリザを手放す気のない国王陛下は、俺が理性を失いエリザを抱いてしまった時に起こるかもしれない二度目の生を危惧していたのだ。  エリザが俺を求め、俺がエリザを求めたから、ここに送り込んだのだろう。  俺は、愛しくて堪らないエリザと離されてしまったことを自覚した。何故なら、俺はここで魔力石を作る練習をしなくてはならないからだ。  エリザ、待っていてくれるだろうか。精密な魔力が込められた魔力石は鉱石からなる宝石よりも美しいという。不器用な俺が、君の魔力を溜めた魔力石で君を飾れるくらいになるまで――、どれくらいかかるのだろう。  少しだけ気が遠くなったのは、気のせいに違いない――。   「はぁ・・・・・・」  バリン・・・・・・とガラスと陶器が一緒に割れたような音が響いた後、俺の口からは意識のないため息が漏れた。 「・・・・・・ちょっと休憩したほうがいいよ。顔色良くないし」  ロウは自分の仕事の合間に、家に籠って石を相手にしている俺を覗きに来た。  風車はもう直っているから俺の手はいらないはずだが・・・・・・と顔を上げれば、心配したような顔がそこにあった。 「ああ・・・・・・。もう石がないし、何より魔力が限界そうだ――」  俺はもう昔のようにエリザの魔力を把握出来ないということはない。エリザが普通に生活できるだけは残せているはずだ。どれほど焦っても、魔力には限界があるからだ。  魔力を溜めることのできる石というのは、ある一定以上の硬度がいる。魔力の負荷を石が耐えることが出来なければいけないからだ。耐えれないことを心配して中途半端な魔力しか注がないと、輝きは鈍く、魔力石としての価値はなくなる。たまに、一度ではなく、何度かにわけて魔力を注げる石というものはあるが、正直な話、国宝級の価値となる。  バリンバリン割ってしまった残骸を前に俺は落ち込む。  今日と昨日だけで一月分の騎士団長としての報奨金を失ったことになるのだ。
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