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「姫様が結婚されてから――と思っているのかもしれませんわね」
私は今十九だから、あと一年もしたら結婚できる歳になる。
アインが私の夫になるのだと・・・・・・、そう思っても想像すらできない。
「アイン様とリューク様が姫様を争って決闘したら、姫様はどちらを応援します?」
ジーニアの意地悪な問いに、私は思わず口ごもってしまう。
「そんなのリューク様に決まってますわ! 私なら夫とリューク様が争ってくれたら、リューク様を応援しますわ」
シーリンは私がどちらと答えてもいいように先にそう言ってくれた。夫婦仲がいいことは皆が知っている。
「私、私は――」
それでも私は何も言えない。リュークがそんなことをしてくれるはずがないこともわかっているのに、なのに、縋りたくなるのは、私の甘えだ。そして、アインはきっと気にしない。私がリュークを見つめていても、平気なのだ。
「姫様は、きっと素敵な恋愛をして、素敵な結婚をされますよ」
魔法使いでもあるミリアがそう言えば、皆「そうね」と頷く。愛において、魔法使いが一番詳しいからだ。
どんなにリュークが好きでも、私は婚約者がいて、国王の仮初の一人娘だ。結婚が自由になるとは思えないし、リュークに好かれているとも思えない。
「ありがとう」
私は、あの魔法使いが命を懸けて生かされているこの状況に満足するべきなのだ。
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