好き

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「エドが!」  エドワードが中にいるのだと言うと、アインは「あれは人間の負の力を栄養にするんだ。エドワードなんて、極上の最高級栄養剤だろうね」と言った。 「大丈夫だから、ほら、もうあれ以上吸えなくて、幹が崩壊を始めたよ。少し避けておこう」  私たちは、ハラハラと降りしきる雪のような木の粉を見上げながら、そこに淡いピンクのような白いようなそんな満開の花をみたような気がした。 「こんなことを言ってはいけないのだろうけど、美しい――。怖いくらいに綺麗・・・・・・」 「あの花は、エドワードが好きだった花だよ。もうどこにもない、記憶の中の花を咲かせて、あの魔物はきっと満足したんじゃないかな」 「陛下の記憶の花ですか・・・・・・。美しいけれど、何だかとても恐ろしくて、切ない気持ちにさせられますね」  私たちは、魔物の最期を見つめてジッと空を見つめていた。  あの天にそびえ立つかと思った木は、粉となって降り積もり、まるで雪の原のようにそこを埋め尽くした。  木の立っていた場所に一人で立ち尽くすエドワードが、何故だかとても孤独に感じられた。 「エド!」  私はリュークの腕からエドワードに手を伸ばした。  表情のなかったエドワードが、今私たちに気付いたように、柔らかく微笑んだ。地上に降り立った竜というのは、人間の姿をとれば、こんな感じなのかもしれないと、ふと思う。  それはエドワードの冠に『偉大なる竜の後継者』とついているからだけど、エドワードの本質のような気がした。  エドワードは、それほど大きな身体ではないけど、私をリュークから受け取って軽々と抱きしめてくれた。 「お父様って呼んでくれないの?」  明らかに茶化しているとわかる口調で私に問う。私は迷いながら、「お父様、来てくれてありがとう」とお礼を言った。  花を見たことは、何故だか言う気にならなかった。あれは、エドワードの心の中だけにあるもので、私たちがのぞき見していいものではない。  エドワードは、私がお父様と呼んだことに少なからず驚いているようだった。私は、エドワードのことが嫌いではない。大好きかと言われたらどうかわからないが、国王として尊敬している。
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