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日常
私の魔力は、基本的に私が使うことは出来ない。
この国には誓約があって、国王陛下に忠誠を誓うものは、愛のためにしか魔法が使えないのだ。そして、国王陛下の許しなく愛の魔法以外の魔法を使えば、この国の魔法の防御壁に弾かれてしまう。
私は、この国で保護された瞬間に国王陛下に忠誠を誓った――。・・・・・・覚えてないけど。
あの王は、鬼だ、悪魔だ・・・・・・。よくわかっていないリュークに酷いものを(自分のことだけど)押し付けたのだ。あの人は、きっとこんな力なんかなくても良かった。とても強い人だ・・・・・・。毎日訓練をして、リュークに適う人なんていない――。
廊下を歩いていると、リュークが剣を振る姿が見えた。黒い髪は、腰のあたりまであって彼が剣を振る度に汗をきらめかせている。瞳の青は、空の青で相手をしている男を余裕を持った瞳で睥睨している。
「エリザ様、気になるのでしたらあちらでご覧になったらいかがですか?」
柱の陰に隠れて見ているのをどうにか思ったのか、後ろで護衛していたブライアンが提案してくれた。
「ええ、でも、アインが待っているから・・・・・・行かないと」
アインは、私の婚約者だ――。婚約者が待っているのだから行かなければならない・・・・・・。なのに何故こんなに足取りが重いのだろう。
アインは、趣味が悪い。性格も悪い。だから国王のお気に入りで、私の婚約者なのだ。
「今日の会議は、散々君の可愛いウトウトと眠る姿を見られて、僕は幸せだよ。今日もリュークの訓練でも見ていたのかい? 十分も遅刻だ」
アインは、私が部屋に入って謝ろうとした隙に畳みかけてくる。
もういい大人なのだから、そんなことは止めて欲しい。
「ご、ごめ」
「そんな目で僕を見ない――。ああ、もう、本当に君は可愛いな」
アインの趣味は悪い。私に告げた言葉の全てが嫌味でないというのだから素晴らしい性格だ。
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