第1章 雨降る空とココアサブレ

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しとしとしと……。 雨が窓に打ちつけ、耳障りな音を立てる。 私……山中桃は大きな溜息をついた。 「なーんか雨の日って...憂鬱になるんだよねぇ」 今は6月。絶賛、梅雨の時期だ。 怒涛のような中間テストが終わり、なんとなくゆるーく時間が過ぎていっている。 今日はバイトもないので暇だ。 学校もバイトもないってことは、イコールで東条に会えないってことだしなぁ……。 ぼんやりとそう考えて、ハッとした。 げっ、このごろ私東条のことばっか考えてない? こんなモヤモヤ考えたって、何か変わるわけじゃないのにさ。 あ、東条っていうのは私のクラスメイトで、バイト仲間。 何のバイトかって? ...実は深いわけがあって、『お嬢様のフリ』をするバイトをしているのです。 成瀬グループっていう超お金持ちの家の一人娘である椿さんが、ある日突然失踪してしまって。 その椿さんにそっくりな私が、代役をすることになったのだ。 東条と椿さんは...んーと、一言では言い表せないので、説明は省いておくけど、幼いときの知り合い...みたいな感じかな。 あっ、そして重要なことがもうひとつ。 ...私は東条のことが...どうやら好きなようです。
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