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「山中っ!来たかっ」
「東条...」
顔を輝かせそうになって、踏みとどまった。
そうだ、私コイツに怒ってたんだ!電話の愛想なさすぎだったし、要件もわかんなかったしさ。
「んー、来たけど……何なの」
斜め上を見ながら素っ気なく言ってみる。
「鈴木さんに聞かなかったか?」
「……聞いた、けど…東条からは聞いてないじゃん、何も」
我ながら駄々をこねてるみたいで、かっこ悪いなぁとは思う。でも...余裕がないんだ。
怖い。東条が見てるのは...ホントは私じゃなくて椿さんに重ね合わせて見てるだけなんじゃないか...って。
だから……。
「山中?どした、顔赤いけど」
東条が不思議そうにこっちを見た。
...空気読めよ!
私はガクッと肩を落とす。いくらライバルがいてもいなくも、東条に気持ちが通じるのはかなり難しいんだろうな……。
「山中?」
「何でもない!なんでもないから...鈍感すぎるんだけどっ」
「は?何の話だよ」
お前のことだよ……。
「で、要件なんなの?」
肩を落としたまま静かに聞くと、東条は口ごもった。
「......とりあえず入って話するぞ。ほら」
その声とともに、腕がぐいっと引かれた。
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