第1章 雨降る空とココアサブレ

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涙目になった東条は、小さな封筒を机に置いた。 「手紙?...これって」裏返して差出人を確認すると、『藤ヶ谷杏子』という名前があった。 杏子さんからの手紙...? 「...私が読んじゃってもいいの?」 「お前は『椿さんの代理』だからさ。いいよ」 なんとなく個人の領域に入っちゃうみたいで気が引けたけど、やっぱり見てみたいっていう気持ちもある。 結局誘惑に負けてそっと手紙を手に取った。 可愛らしいピンクの封筒を開けると、折りたたまれたたまご色の便箋が出てきた。 破らないように丁寧に開く。 そこにはクセのある丸っこい字でこう書かれていた。 『きょーこです。久しぶり!皆元気にしてた?あたしは元気だよ。 って興味無いよね?えへへ。そうそう、お姉ちゃんの葬儀、結局行けなくてごめんなさい。会社、パパの代からお姉ちゃんの旦那さんが継いだんだって?あ、その人もいなくなったんだっけ。あ...ごめんごめん、なんか暗い話になっちゃった。そーゆんじゃないんだよね。 今、あたしはいろんなとこを旅して物を売る職業やってます。そして、お姉ちゃんの娘の椿ちゃんと一緒にいるんだっ。驚いた?おどろいたよね、そりゃそーだ、だってあたしが一番驚いてるからね!椿ちゃんはあたしの連絡先を聞きつけて手紙をくれて、なんか思いつめてるっぽかったから呼んだんだ。今、預かっちゃってる感じでーす。すっごくいい子だよ。お姉ちゃんのちっちゃい頃に似てるよね。 とりま、椿ちゃんは大丈夫だから!探してるならそう報告しといて。近いうちに送り届けるから心配いりませんヨ! ではでは愛を込めてっ! 杏子』
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